現役で活躍している映画監督、演出家が多数講師として教鞭をとる「す・適塾」。映画やテレビの本番と同じ状況の中、一人ひとりに丁寧な演技指導を行い実践的なレッスンを重ねる。毎回のレッスンがオーディションのようなもので、講師の目に留まった塾生が講師の方達の作品に起用されるということも珍しくない。また優秀者は、す・適塾を運営する芸能プロダクション「アクト・トゥ・ワン」に所属しプロの俳優として活躍する道も開かれている。

 

 

 

演じること、演技することをいつまでも好きでいてほしい

す・適塾 講師  井坂 聡監督

いさか・さとし●1960年、東京生まれ。東京大学文学部美学芸術学科卒業。その後、フリーの助監督として瀬川昌治、東陽一に師事を仰ぐ。映画、テレビドラマの助監督、ディレクターなどを経て、1996年『〔Focus〕』で劇映画監督デビュー。同作品で毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞、ベルリン国際映画祭NETPAC賞など、国内外多数の映画賞を受賞。その後も『ミスター・ルーキー』(02年)、『g@me.』(03年)、『マナに抱かれて』(03年)などの作品を手がけ、第一線で活躍を続けている。

 

 

第一線の映画監督として活躍を続けられている井坂聡監督。同時にす・適塾の講師として、役者志望の学生たちを相手に直接演技指導も行っている。現役バリバリの映画監督が語る映画とは、そして役者とは?「大切なのはリアクション!」と語る井坂監督の言葉から、今、現場で求められている役者像が垣間見える。

 

 

●監督ご自身が、映画あるいは映画監督という職業に興味を持たれたのはいつ頃だったのですか?

 高校2年、3年のときに映画の校内コンクールというのがあって、初めて映画を作ったんですが、その時にこんなに面白いものはないなぁと思ったのがきっかけですね。絵があって、音もあって、舞台とは違って現実のなかでやれるということもあって。これは本当に面白いなと思いましたね。

 

●東京大学文学部で学ばれていますが、大学時代はどんなことを学ばれていたのでしょう?

 大学受験当時は、小説家とかジャーナリストに興味を持っていたんです。高校の卒業アルバムには、「ジャーナリストになりたい」なんて書いてありますよ。そんなこともあって、大学受験となったときに、大雑把に文学関係を勉強したいと思ったんですね。大学に入ってからは、あまり授業にも出ずに野球ばっかりやってましたよ。最近は野球部でもずいぶん授業にも出るようになったようですが、僕らの頃は練習優先でしたから。

 

 

 

●大学卒業後、監督としてメガホンをお取りになる前は、どんなことをされていたのですか?

 これも野球部のOB会のご縁だったんですが瀬川昌治監督を紹介していただいて、フリーの助監督として使っていただいたんです。当時は映画関係は人を採っていないよ、ということで、どうしてもやりたいならフリーでやるしかないといわれて、フリーの意味もよく分からないままこの世界に飛び込んだという感じですね。映画がやりたいとは思っていましたが、当時瀬川監督はテレビドラマのお仕事も結構なさっていたので、テレビの仕事も多かったですよ。当時はまだテレビドラマもフィルムを使って撮影していましたから、ずい分映画の勉強にもなったと思っています。

 

●監督としてのデビュー作『〔Focus〕』は各方面から高い評価を得ていらっしゃいますが、この作品をお作りになるきっかけは、どんなことだったのですか?

 私自身が映画の世界に入ってこの作品を作るまで13年かかっているんですが、これも縁なんでしょうね。ある会社の企画で作った映画だったんです。「いきのいい新人監督を起用して作品を作って、デビューさせるという企画があるんだけど」というお話をいただいて、それに応募しまして、面接などいろいろあってご指名をいただいて作った作品なんです。

 

●監督のお考えになる「いい役者」というのは、どんな役者さんでしょう?

 そうですね。自分はしっかり持っているんだけれども、監督の要求に対して柔軟に対応できる役者さんじゃないでしょうか。やはり自分がなくてはだめだと思うんですね。そこにはその人が生きてきた人生があるわけですから。ちゃんとその人が生きてきたかどうかが、問われると思うんです。ちゃんとと言ってもまじめにという意味ではなくて、一本筋を通して生きてきたかどうかということが重要なんです。

 

●その「いい役者」になるためには、どんな要素や努力が必要だとお考えですか?

 これは私が日ごろから学生たちにもよく言っていることなんですが、「まず人をよく見なさい」ということですね。演技というのはマネることから始まると思いますから、いろいろな人を観察することで演技のヒントも得られるはずです。ですから、電車に乗っているときや町を歩いているときなど、常に人を観察してみるというのはいい訓練になると思いますよ。もうひとつは、「自分の表情をよく見なさい」ということも言います。鏡に向かっていろいろな表情を作ってみて、どう見えるのか研究するのも大切です。 自分では笑っているつもりでも、人から見ると引きつった笑いにしか見えないということもありますからね。役者というのはスポーツ選手と同じだと思うんですよ。顔も含めて全身の筋肉を使って、自分の思うような表現をしなくちゃならない。そのためには、顔の筋肉を鍛えるような訓練も必要でしょう。そして、「感情の幅を大きく持ちなさい」ということも言います。笑うときは笑う、怒るときは怒る、泣くときは泣くという風に、はっきりと感情を持つこと。そうすることで、心の柔軟性が鍛えられると思うんです。やはり感情の乏しい人は、表情も乏しい。豊かな表現をするためには、豊かな感情が必要だと思います。

 

●現在は、「す・適塾」の講師としても活動されているわけですが、どのような講義をご担当されているのですか?

 私の授業は、実際の現場と同じような感じです。事前に簡単な台本を渡しておいて、今日はここをやってみようという感じであるシーンをやって、それをビデオに撮ります。それを見ながら、いろいろレクチャーしたりします。私の場合は役者さんの細かい動きに対してあまり制約をつけたくないんです。細かい部分は役者さん自身が考えて演じる部分だと思っていますから。ただどういう気持ちで演技をしたか、セリフを言ったかということは大切にしています。特に大事にしているのはリアクションのほうですね。お芝居は相手があって成り立つことですから、相手の言っていることをよく聞く、それに対してどういう気持ちで自分のセリフを発するかということが重要なんです。

 

●学生の皆さんに、こうしたことを伝えていきたいとお考えになられていることはありますか?

 これはワークショップなどでも指導していることなんですが、技術的なことでいうと体を柔らかくすること、発声練習とカツゼツはしっかり練習しなさいとよくいいます。これができていないと、役者としては通用しない。そしてこれは技術ですから、練習すれば必ず上達するんです。それと前にもいいましたが、人を観察すること、喜怒哀楽をはっきり意識することですね。もうひとつは、相手があることを忘れないことですね。何度も言うようですが、お芝居は必ず相手があって成り立つものだということを忘れないでほしいですね。

 

●今、日本映画は元気がいいですが、監督は今後こんな作品を作りたいとかこんな活動をしていきたいという夢はおありですか?

 そうですね。やはり見終わった後に、見てくださったかたが元気になるような映画を作りたいですね。それは、なんかがんばれ、がんばれって単純にいうことばかりじゃなく、思いっきり泣いて元気になる、あるいは見終わってスカッとして元気になるということもあるでしょう。そうしたことも含めて、見てくださったかたの活力になるような映画が作りたいですね。

 

●俳優を目指す学生さんたちにおすすめの映画を教えてください。

 手前味噌になりますが、『〔Focus〕』という映画は、今までお話してきたことの圧縮版みたいなところがありますから、参考になると思いますよ。それと橋口亮輔監督の『ハッシュ』という映画もいいと思います。俳優さんたちが自然体の演技をしている映画で、学生さんたちには参考になるんじゃないでしょうか。最近の作品では周防正行監督の『それでもボクはやってない』はお勧めですね。これは映画としてもとても面白い作品だと思います。

 

●最後に、エデュパを見ている俳優、声優などアクターを目指している若い人たちに、メッセージをお願いいたします。

 

 好きなことならばいつまでも続けられると思うので、演じること、演技をすることをいつまでも好きでいてください。そして、自分に厳しい意見を言ってくれる人の話を素直に聞きなさいといいたいですね。それと、パッと咲いてパッと散るのがいいのか、長く続けられることがいいのかよく考えなさいということですね。長く続けるためには、それなりに下積みも必要です。あせらずに、自分のことを長い目で見てがんばってほしいと思います。

 

 

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