第9回 自己アピールは「百聞は一見」

オーディション受けて休んでいた人とは連絡とれました?

合格したそうです。

よかった!

でも、行かないそうです。この授業も止めるそうです。

ええ!どうして?たしか、養成所のオーディションだったよね。

そうです。特待生になれて、入所金は免除なんですけど・・・。

それはすごい。なんで気が変わったんだろう。

というかあ、先生には言わないでって言われたんだけど、親が急に離婚するって言い出したんです。もう別居したんですって。

う〜ん、で、彼は今どこに住んでるの?

携帯は通じるんだけど、どこにいるかは言わないんです。金ないんで働かなきゃって・・・。

とにかく一度直接話したいな。番号を教えて?

先生には言うなって。

あっそうか!(>_<)とにかくここへ来るように伝えて・・・。

進路にはいろいろなことが起こるね。さて、夏休みも終わりました。後期も元気出していきましょう。質問ありますか?

はーい、オーディションの自己アピールって何をすればいいんですか?

自分のことを説明すればいいんですか?

そうなんだが、単なる自己紹介とは違うんだな。自分の個性をしっかり訴えないと。

審査は、うまいかどうかや、感性を見るんですよね。

出演募集のオーディションはうまいことも大切になると思いますが、養成所の審査は、可能性を見るもので、現在の上手ヘタで決まるわけではないんだ。それより、情熱と個性が感じられることが大切だ。

先輩は自己アピールで歌を歌ったって言ってました。

そう、歌う人は多いね。

わあ〜m(_ _)mオレ歌ダメだ。

自分の長所や得意なことを話すのではダメですか?

そんなことはないけど、「何かやってもいいですよ」という場合は、話すよりやった方が個性が伝わるでしょう。インパクトも必要だし。最近は「自己アピール」が、その人の個性を見るのに役立つんで、重みを増してきたみたいだね。

そうか!何か考えとかないと。

わたしは歌を歌おう。それが簡単だし。

おれも!

それもいいけど、歌えば個性が出るわけではないよ。

大切なのは自分の好きなこと、大切なことを、熱く話し、できるモノはやってみせることだ。自己アピールは長いのはダメだ。「百聞は一見に如かず」。

先生にとって印象に残った自己アピールってどんなんですか?

それを聞いて真似する気だな!

ねえ、聞かせてくださいよ。

ワイワイガヤガヤ!!

そうだなあ。高校生の女子で、子犬の声で「喜怒哀楽」をやったのは受けたなあ。

どうやったんですか?

こうだ。「喜」は、ワン♪。「怒」は、バワン。「哀」は、うわ〜ン。「楽」は、ふわん。どうも、先生がやると面白くないな。

それアイデアだなあ。

「大型犬もやってくれ」と言ったら「ただいま研究中です」って。(笑い)

わたし猫でやろう!

きみたち安易だなあ!

おれ牛でやろ!

モウ、(+_+ )。ハイ、次は高校生の男子。「運動部なんで、なんにもできませんので、バスケットをやります」とボール無しで、つまり無対象で「一人バスケ」をやり出した。動きが速く、超リアル。シュートすると固まってなかなか動かない。審査の先生が「終わりですか?」と聞いても動かない。気まずい空気になった。そのとき、急に彼が「入った、きまったロングシュート!勝った」って叫んで倒れたんだ。

そいつ、本当に運動部かよ?

それから、「おばあちゃんが聞かせてくれたお話をします」と言って、床に座って物語をはじめた子もいたな。これがあったかい雰囲気でなかなかよかった。その子は話し終わってもじっと床を見つめて立たない。「どうしたんですか?」と聞くと、「おばあちゃんは2週間前になくなったんです」と。(T_T)みんなウルウル。

先生!!あいつから電話です。授業中ですけど出ていいですか?

もちろん!いや、特別に許す!

もしもし、うん今大丈夫だよ。えっ先生?

(?_?)

 

次の授業は10月7日(火)です。

 

おたすけ先生のプロフィール

佐藤 正隆/さとう まさたか  演劇制作歴40年。プロデューサーとして倉林誠一郎記念賞受賞。また、プロデュースした舞台が、朝日舞台芸術賞、湯浅芳子賞の作品賞、演出賞、新人賞などを受賞している。一方、俳優・声優のマネージメントも手がけ、新人の発掘・育成には定評がある。ラジオでは「おたすけ先生」としてレギュラーコーナーを担当。著書に「おたすけ進路俳優偏」など。現在、東京農工大学、日本大学藝術学部、東海大学、専門学校東京アナウンス学院の非常勤講師。アクターズ・セミナー・ハウス責任講師。

 

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