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――声優になるきっかけはどんなことからだったんですか? 声優になる前はプロボウラーを目指していたんです。でも、いろいろあってちょっとした引きこもりになってしまったんです。そんな状態を克服しようとテレビ局の大道具などを経てタレント養成所に入所。1年間のレッスンの後にプロダクションに入れてもらったんですが、そこが主に声の仕事を請け負っている会社だったのが声優になるきっかけでした。
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――声優デビューは? 水ようかんのラジオCMが初めての仕事でした。この作品でいきなりCMコンクールの奨励賞を受賞して自信を深めたんですが、その後がサッパリ。ようやく掴んだアニメ『UFOロボ グレンダイザー』の番組レギュラーの座も1回呼ばれただけで降ろされてしまった。メチャクチャ悔しくてね。四畳半のアパートの部屋で枕に顔を押し付けて泣きましたよ。それからというもの毎日近所の河原に行っては「大変です!UFOが来ます・・・」というそのときのせりふを繰り返し言っていた(笑)。
――今、声優はメジャーな存在ですが、当時の声優はどんなポジションにあったんですか? 30年程前だと、声優は限られた専門職という感じで、声優という呼び名で言われ始めた頃だったと思います。声優という言い方に抵抗を持っていた人もけっこういましたね。声優は本来俳優なわけで、声優と言われると声だけの人みたいなイメージですから。
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――声優として軌道に乗り出したのはいつ頃だったんですか? 22歳のときに『一休さん』の哲斉を、翌年に『キャンディ・キャンディ』のアンソニーを演じてから注目を浴び、順調に仕事も増えていきました。声優として広く知られるようになったのは25歳で『サイボーグ009』の島村ジョーを演じたときです。この作品は昭和40年代に大人気だった1作目に続き、2度目のアニメ化でした。役はオーディションで決まったんですが、ファンの思い入れが強いキャラクターでしたから制作側も気合が入っていて、数多くの人がオーディションを受けたと聞いています。 |
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――井上さんが009役を射止めた決め手は何だったんでしょう? “素”の自分の声が島村ジョーにぴったりだったみたいです。オーディションの冒頭で役名と自分の名前を言ったら、いきななり監督が立ち上がって、「それだよ、それ!009のイメージは!」って(笑)。その瞬間、僕は声優として大きなチャンスを手に入れたんです。
――反響は大きかった? 番組は1年間放送されましたが、毎週数え切れないほどのファンレターが事務所に届き、驚きとともに、嬉しい毎日でした。これ以降、仕事の幅も広がり多くの番組に出演して忙しくなりました。009が声優としてのまさに転機でしたね。
――オーディションで上手く演じる秘訣はありますか? 少ないせりふと短い時間の中で、いかにその役になりきれるかだと思います。ただカッコよく言えればいいんじゃなくて、そのシーンの中にいかに存在し、生きているように演じることができるか。気持ちを作ってせりふをしゃべることです。
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――緊張しない方法はありますか? スタジオの緊張感の中で芝居をするときに自分をどこまでコントロールできるか、それができないとドキドキしたまま終わってしまう。自分を必要以上によく見せようとするから緊張するんですよ。オーディションに落ちても死ぬわけじゃない。運の要素も大きいので、もっと気軽に考えることも必要です。
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――井上さんご自身の中で代表作だと思っている作品は? 映画『キャスト・アウエイ』のトム・ハンクスの吹替えがベスト1です!洋画の吹替えの場合、役者の口の動きに合わせてせりふをしゃべるだけではなく、役者の呼吸とも合わせていくんです。そうやって声をアテているとそのうちに役者とシンクロする感覚を覚えてくる。この作品では、彼が抱いたであろうこの映画への想い、役作りの苦労までが声をアテている中で感じ取ることができて、トム・ハンクスへの“乗り移り感”がすごかった。本当に良い作品なのでぜひ一度日本語吹替え版で観てください。
――今までで一番苦労した作品は? アニメ『美味しんぼ』の主人公・山岡士郎ですね。収録前に肺炎にかかり2週間収録が延期になってしまい周囲に迷惑をかけてしまった上に役作りでも悪戦苦闘。監督からは「カッコ良くしゃべるな。ピリッとするのは料理のシーンだけでいいから」と言われてもうまくできない。考えあぐねているそんなとき、あるディレクターをみて「これだ!」とひらめいた。そのディレクターを真似てしゃべったらこれがピタリと山岡士郎に当てはまって、ようやくいい感じに演じられました。
――仕事以外で今一番の楽しみは何ですか? ウインドサーフィンですね。いつもスタジオの中にいると外に出たくなるんですよ。声優とウインドサーフィンは似ているんです。ウインドサーフィンは見えない風を見なきゃいけない。どうするかというと木々の揺らぎや波立つ水面を見ることで風を見るんです。声優もまた見えないキャラクターの姿を見つけなきゃいけない。ストーリー、登場人物などをヒントに、あらゆる角度から想像力を膨らませてぼんやりとしていたキャラクターの姿をくっきりと浮き上がらせるんです。どちらもイメージを的確に捉えることが大切です。
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――井上さんは声優として活躍する一方で、B-Box Actors Schoolを主宰して後進の指導にも熱心ですが、声優を目指すにあたり、何が一番大切だと思いますか? 素直さと努力です。人の言葉を聞き入れる素直さと自分のマイナス面を克服する努力は欠かせません。オーディションに受かってもそれは、一人前の声優になったのではなくスタートラインに立ったということ。5年後、10年後を見据えて努力して欲しいですね。これから声優を目指す人は貪欲に頑張って欲しい。頑張った事実は確かに残るものです。努力をするという体質を身につけたらどんなことだってできる。努力を覚えた人は強いですよ! |
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